中国の旧正月(春節)を祝う食卓 なぜ餃子と年糕を食べるの?
中国の旧正月「春節」とは
中国の旧正月、あるいは「春節(しゅんせつ)」は、中国で最も盛大に祝われる伝統的な祝日です。グレゴリオ暦(一般的な新暦)ではなく、旧暦に基づいて計算されるため、毎年日付が変わります。通常は1月下旬から2月下旬にかけてのいずれかの日です。
春節は、家族が集まり、新年を迎え、五穀豊穣や家内安全を願う大切な時期です。日本のお正月のように、人々は故郷に帰り、家族や親戚と共に時間を過ごします。家の中をきれいに掃除したり、「春聯(しゅんれん)」と呼ばれる赤い飾りを貼ったりして、新しい年を迎える準備をします。そして、この祝祭には、美味しい食事が欠かせません。
春節に欠かせない伝統の味:餃子と年糕
中国では、「食は天なり」ということわざがあるほど、食事は人々の生活や文化において非常に重要な位置を占めています。特に春節のような特別な日には、縁起をかついだり、願いを込めたりする様々な伝統的な食べ物が登場します。その中でも、多くの地域で代表的なのが「餃子(Jiaozi)」と「年糕(Nian Gao)」です。
願いを包む「餃子」
餃子は、中国北方を中心に春節に欠かせない食べ物です。特に、大晦日の夜、家族みんなで集まって餃子を作り、新年を迎える午前0時頃に食べるのが伝統的な習慣です。
餃子の形に込められた意味
餃子の特徴的な形は、清王朝以前に使われていた「元宝(げんぽう)」という貨幣に似ていると言われています。そのため、餃子を食べることは「財が増える」「金運に恵まれる」といった、富への願いが込められています。また、餡を皮で包むという行為は、「幸福を閉じ込める」「家族が一つになる」という意味合いも持っています。家族みんなで食卓を囲み、同じものを食べながら新年を迎えること自体が、何より大切な時間なのです。
子どもも楽しめる餃子エピソード
餃子を作る際に、餡の中にコインやナツメなどの縁起物を隠しておくという習慣を持つ家庭もあります。見つけた人には幸運が訪れると言われている、ちょっとした遊び心です。どんな具材を包むか、どんな形にするかなど、家族で相談しながら作るのも楽しい時間です。
年々向上を願う「年糕」
「年糕」は、もち米から作られるお餅のような食べ物です。「年糕(nián gāo)」という発音が、「年々高昇(nián nián gāo shēng)」、つまり「年々向上する」「成績や仕事の成果が上がる」という意味の言葉と似ていることから、新年に食べることで、来年もさらに良い一年になるようにという願いが込められています。
地域で異なる年糕の形と味
年糕は、地域によって形や味が大きく異なります。東部の沿岸地域などでは、もち米を蒸して砂糖を加えた甘い年糕が一般的で、魚の形や棒状など様々な形があります。上海周辺では、もち米を潰して板状にしたり、短冊状に切ったりしたものが多く、野菜や肉と一緒に炒めたり煮たりして食べることもあります。どちらのタイプも、粘りがあり、食べるとお腹にたまることから、豊かな収穫や満腹感を願う意味合いも感じられます。
身近な食材で体験するヒント
もし、本格的な中国の食材が手に入りにくい場合でも、日本の餅(おもち)を使って、少しアレンジして年糕の雰囲気を体験してみるのも良いでしょう。例えば、切り餅を小さく切って中華風の甘いスープに入れたり、炒め物に加えてみたりすることができます。(ただし、日本の餅と中国の年糕は食感や風味に違いがあります。)また、中華食材店などでは、様々な種類の年糕が手軽に入ります。
食文化から異文化を学ぶ
春節に食べられる餃子や年糕には、それぞれの形や名前に込められた人々の素朴な願いや、家族を大切にする文化が反映されています。これらの食べ物を知ることは、単に料理の名前を覚えるだけでなく、その国の歴史、文化、価値観に触れることにつながります。
「なぜこの形なのかな?」「どうしてこの名前の食べ物を食べるのだろう?」といった疑問を持つことから、異文化への興味は始まります。日本の祝いの席で食べるお餅や赤飯、あるいは他国の祝日の食べ物と比較してみるのも、文化の違いや共通点を発見する面白いきっかけになるかもしれません。食を通して世界の祝日を知ることは、子どもたちの視野を広げ、多様な文化を尊重する心を育む一助となるでしょう。
春節の時期に、これらの食べ物をテーマに、中国の人々が新年をどのように迎えるのか、どんな願いを込めているのかに思いを馳せてみるのはいかがでしょうか。