エチオピアのティムカット なぜインジェラとドロワットを食べるの?
ティムカットとは?エチオピアの重要な祝祭日
ティムカットは、毎年1月19日(うるう年は1月20日)にエチオピアで祝われる、エチオピア正教会の重要な祝祭日です。これはイエス・キリストがヨルダン川で洗礼を受けたことを記念する日で、「洗礼」を意味します。ティムカットの期間中、人々は色鮮やかな伝統衣装をまとい、教会から運ばれた「タボット」(契約の箱のレプリカ)と共に街をパレードし、特別な水浴の儀式を行います。この水浴は、イエスの洗礼と自らの信仰を新たにする意味合いがあります。宗教的な儀式が中心ですが、家族や地域の人々が集まり、共に食事を楽しむこともこの祝祭日の大切な一部です。
祝いの食卓に欠かせないインジェラとドロワット
ティムカットのような特別な日には、エチオピアの家庭で特別な料理が用意されます。その中でも中心となるのが、エチエチオピアの主食である「インジェラ」と、祝いの席の定番料理「ドロワット」です。
酸味のある不思議なパン「インジェラ」
インジェラは、テフという非常に小さなイネ科の穀物の粉を発酵させて作った、クレープやスポンジのような独特な食感と酸味を持つパンです。直径50cmほどにもなる大きな円形に焼かれ、これをちぎって、様々なおかず(ワット)を掴んで一緒に食べるのがエチオピアの伝統的な食事スタイルです。ティムカットの食卓でも、大皿に盛られたインジェラの上に彩り豊かなワットが乗せられ、皆でそれを囲んで食事をします。インジェラの酸味は、消化を助けるとも言われています。
特別な日のご馳走「ドロワット」
ドロワットは、鶏肉を玉ねぎや様々なスパイス(ベルベレというエチオピア独自のミックススパイスが使われます)と共にじっくり煮込んだ、辛味と深い旨味のあるシチューです。骨付きの鶏肉やゆで卵が丸ごと入っていることも多く、特別な日や来客をもてなすための、とても手間のかかる豪華な料理とされています。ティムカットのような祝いの日には、多くの家庭でこのドロワットが作られ、インジェラと共に振る舞われます。ゆで卵は生命や豊穣の象徴とも言われ、祝いの席に華を添えます。
なぜこれらの食べ物が祝いの日に結びつくの?
インジェラが祝いの席に欠かせないのは、それがエチオピアの日常的な主食であり、人々が集まって共有する食事の中心だからです。大きなインジェラを囲み、手でちぎってワットと共に食べるスタイルは、家族や地域の人々との結びつきや共同体意識を象徴しています。祝いの日には、その共有の食事がより一層特別な意味を持ちます。
ドロワットは、鶏肉がかつては高価で貴重な食材であったこと、そして作るのに時間と手間がかかることから、「特別な日のためのご馳走」として位置づけられています。ティムカットという一年で最も重要な祝祭日の一つだからこそ、惜しみなく時間と労力をかけてこの料理を作り、家族や友人と分かち合うのです。つまり、インジェラは「共に祝うつながり」を、ドロワットは「特別な祝いのための感謝とおもてなし」を表していると言えるでしょう。
食文化を通して異文化を知るヒント
エチオピアのティムカットの食文化を知ることは、私たち自身の食文化や習慣を改めて考える良い機会になります。
- 「主食」って世界にどんなものがあるかな? 日本の米、エチオピアのテフを使ったインジェラのように、国によって主食となるものが違うことを話してみましょう。とても小さなテフの粒から大きなインジェラになることを紹介するのも面白いかもしれません。
- 「手で食べる」ってどんな感じ? エチオピアではインジェラを手でちぎって食べます。食事の道具が違うことや、手で食べることのメリット(熱さや固さを感じられるなど)を想像してみるのも良いでしょう。簡単な料理(おにぎりやサンドイッチなど)で、手で食べる体験をしてみるのも楽しいかもしれません。
- 「特別な日のご馳走」は何かな? お正月におせちを食べたり、誕生日にはケーキを食べたりするように、特別な日に特別な料理を用意するのは世界共通です。エチオピアのドロワットのように、手間がかかる料理や、貴重な食材を使った料理が選ばれる理由を考えてみましょう。
- 「一緒に食べる」ってどんな気持ち? 大きなインジェラを皆で囲むエチオピアの食事風景は、共に分かち合うことの大切さを教えてくれます。家族や友達と食卓を囲むことの楽しさや温かさについて話してみましょう。
ティムカットの食文化を通して、遠い国エチオピアの人々がどのように祝い、何を大切にしているのかを垣間見ることができます。食は、その国の歴史や文化、人々の暮らしを知るための素晴らしい入り口なのです。