ブラジルのフェスタ・ジュニーナ なぜトウモロコシ料理がいっぱいなの?
ブラジルの楽しいお祭り、フェスタ・ジュニーナとは
ブラジルでは、毎年6月になると「フェスタ・ジュニーナ」(Festa Junina)、日本語では「6月祭」と呼ばれる大きなお祭りが各地で盛大に開かれます。このお祭りは、キリスト教の聖人である聖ヨハネ、聖ペトロ、聖アントニオを祝うと同時に、ブラジル国内、特に農村部にとってはちょうどトウモロコシなどの収穫期にあたるため、収穫への感謝を捧げる意味合いも持っています。
フェスタ・ジュニーナの会場は、田舎の収穫祭をイメージして飾り付けられます。藁や木材を使った飾り付け、カラフルな万国旗(バンデイリーニャス)、提灯などが飾られ、素朴で温かい雰囲気に包まれます。人々はチェック柄の服に麦わら帽子といった田舎風の衣装を着て、フォークダンスを踊ったり、ゲームを楽しんだりします。そして、このお祭りに欠かせないのが、屋台に並ぶたくさんの美味しい食べ物です。
フェスタ・ジュニーナを彩るトウモロコシ料理
フェスタ・ジュニーナの屋台を歩くと、甘い香ばしい匂いがあたりに漂っています。その香りの正体の多くは、トウモロコシを使った様々な料理やお菓子です。まさに、フェスタ・ジュニーナは「トウモロコシ祭り」と言えるほど、バラエティ豊かなトウモロコシ料理が楽しめます。
いくつか代表的なトウモロコシ料理をご紹介します。
- パモーニャ (Pamonha): すりおろした生トウモロコシに牛乳や砂糖(または塩)を加えて混ぜ、トウモロコシの皮で包んで蒸したものです。甘いパモーニャはデザートとして、塩味のパモーニャはおかずとして食べられます。もちもちとした独特の食感とトウモロコシの自然な甘みが特徴です。
- カニカ (Canjica): 乾燥させたトウモロコシの実を柔らかくなるまで煮込み、牛乳、砂糖、シナモン、クローブなどを加えて作る甘いお粥のようなデザートです。ココナッツミルクを加えることもあります。寒い時期に体を温めてくれる家庭的な味です。
- ボロ・デ・ミーリョ (Bolo de Milho): トウモロコシ粉やトウモロコシの実を使って作るケーキです。しっとりとした食感で、朝食やおやつによく食べられます。チーズを加えたり、ココナッツを加えたりと様々なアレンジがあります。
- クスクス・パウリスタ (Cuscuz Paulista): これは少し変わっていて、トウモロコシ粉をベースに、いわしやエビ、野菜などを加えて型に入れて固めた、ゼリー寄せのような料理です。ブラジル南東部のサンパウロ州で生まれた郷土料理ですが、フェスタ・ジュニーナでも人気があります。
この他にも、焼きトウモロコシ(ミーリョ・アサード)や、揚げたトウモロコシ生地のお菓子など、数え切れないほどのトウモロコシ料理が屋台を彩ります。
なぜこのお祭りでトウモロコシがたくさん食べられるの?
フェスタ・ジュニーナでこれほどまでにトウモロコシが主役になるのには、いくつかの理由があります。
一つは、収穫期であることです。ブラジルでは6月は地域によってトウモロコシの収穫期にあたります。収穫できた恵みに感謝し、それを分かち合うという意味で、トウモロコシが中心的な食材となりました。
二つ目は、祭りの起源との関連性です。フェスタ・ジュニーナの元になったのは、ヨーロッパで行われていた夏至祭やキリスト教の聖人祭です。これらの祭りは、その土地の収穫を祝う要素を持っていました。ブラジルに伝わった後、その土地でよく収穫されるトウモロコシが、祝祭の食べ物として定着していきました。
三つ目は、地域性です。ブラジルは広大な国であり、地域によって気候や収穫される作物が異なります。しかし、トウモロコシはブラジル各地で栽培されており、様々な形で利用されてきました。そのため、国内の広い地域で共通して祝われるフェスタ・ジュニーナにおいて、トウモロコシが象徴的な食材となったと言えます。
トウモロコシは、そのまま焼いて食べるだけでなく、粉にしたりペーストにしたりと様々な形に加工できるため、バラエティ豊かな料理を生み出すことができました。これも、お祭りという特別な日に多くの人々が楽しむための重要な要素です。
食文化にまつわる面白いエピソードやヒント
フェスタ・ジュニーナは、子どもから大人まで楽しめるお祭りです。屋台で温かいパモーニャを頬張ったり、香ばしい焼きトウモロコシにかぶりついたりするのは、このお祭りの大きな楽しみの一つです。
また、このお祭りでは、カップルが農村風の衣装を着て結婚式を模倣したダンス「クアドリーリャ」(Quadrilha)を踊るのが恒例ですが、このダンスの掛け声にもトウモロコシ畑に関連する言葉が出てくることがあります。お祭り全体が、どこか懐かしく、素朴で温かい農村の暮らしを思い出させるような雰囲気を持っています。
家庭でフェスタ・ジュニーナの雰囲気を少しでも味わってみるなら、市販のコーンミールやコーンスターチを使って簡単なトウモロコシのおやつを作ってみるのも良いでしょう。例えば、ホットケーキミックスにコーンミールを混ぜて焼いたり、市販のコーンスープに牛乳やシナモンを加えてブラジル風カニカ風にアレンジしてみたりするのも面白いかもしれません。絵本でブラジルの文化に触れたり、サンバなどのブラジルの音楽を聴いてみるのも、異文化を知る良い機会になるでしょう。
食文化からブラジルを知る
フェスタ・ジュニーナの食文化を通して、ブラジルの文化や人々の暮らしに触れることができます。一つの食材であるトウモロコシが、これほどまでに多様な料理やお菓子に姿を変え、収穫への感謝や聖人への祈りと結びついていることは、食が文化や人々の心と深く繋がっていることを教えてくれます。
子どもたちにこのお祭りのことを紹介する際には、 * 「ブラジルの人は、トウモロコシからどんなものを作って食べているかな?」 * 「みんなの国や地域では、秋にどんなものを収穫して、それをお祝いする行事はあるかな?」 * 「お祭りや特別な日に、家族や友達と食べる特別な料理はあるかな?」 といった問いかけをすることで、子どもたちが自分の身近な食文化や季節の行事と比べながら、ブラジルの文化への理解を深めるきっかけになるかもしれません。
フェスタ・ジュニーナの賑やかで美味しい食卓は、ブラジルの人々の陽気さと、自然の恵みや伝統を大切にする気持ちを表していると言えるでしょう。