食文化で知る世界の祝日

フィンランドの春の祝祭 ヴァップ なぜ甘い飲み物シマと揚げ菓子フリッテリを食べるの?

Tags: フィンランド, ヴァップ, 食文化, 春祭り, シマとフリッテリ

フィンランドでは、毎年5月1日に「ヴァップ(Vappu)」というお祭りが盛大に祝われます。これは長い冬が終わり、暖かい春の訪れと夏の始まりを告げる、多くの人々が待ちわびる日です。もともとは大学の卒業と新しい学年の始まりを祝う学生のお祭りでしたが、今では労働者の日(メーデー)とも結びつき、国民的な春の祝祭として親しまれています。

ヴァップの日には、人々は家族や友人と集まり、ピクニックを楽しんだり、街中のお祭り騒ぎに参加したりします。そして、このお祭りに欠かせない特別な食べ物や飲み物があります。

ヴァップに欠かせない二つの味:シマとフリッテリ

ヴァップの時期になると、フィンランドの家庭ではある特別な飲み物が準備されます。それが「シマ(Sima)」です。シマは、レモン、砂糖(またはハチミツ)、酵母、水を使って作られる、自家製の発泡性飲料です。数日かけてゆっくりと発酵させることで、ほんのりとした甘さと酸味、そして炭酸のようなシュワシュワとした口当たりが生まれます。元々は弱いアルコールを含むハチミツ酒でしたが、現在家庭で作られるシマの多くはアルコール度数が非常に低いか、全く含まないノンアルコールタイプです。レーズンが加えられることも多く、発酵が進むとレーズンが浮かび上がってくる様子が完成の目安とされています。

もう一つ、ヴァップの時期に街の屋台やパン屋さんで必ず見かけるのが「フリッテリ(Tippaleipä)」という揚げ菓子です。これは、漏斗(じょうご)のような道具を使って熱い油の中に生地を細く複雑な形に垂らし、カリカリになるまで揚げたものです。仕上げに粉砂糖をたっぷりとかけて食べます。見た目もユニークで、サクサクとした軽い食感と甘さが特徴です。これと一緒に、「ムンッキ(Munkki)」と呼ばれるフィンランド風のドーナツも、ヴァップの定番として親しまれています。

なぜこれらの食べ物がヴァップと結びついているのか

ヴァップが学生のお祭りとして発展した背景が、食文化にも影響しています。長い勉強期間を終え、新しい始まりを迎える学生たちは、ヴァップを心待ちにし、街に出て友人たちと喜びを分かち合いました。 シマは、発酵によって生まれるシュワシュワとした口当たりや、甘さが、お祝いの気分を盛り上げるのにぴったりです。家庭で手作りするプロセスも、春の訪れを家族と共に感じる温かい時間となります。自家製の発酵飲料は、古くから春の生命力や活力を象徴するものとして楽しまれていたのかもしれません。 フリッテリやムンッキのような揚げ菓子は、屋外でのピクニックや集まりで手軽に分け合えること、そしてお祭りらしい特別感や甘さが、開放的なヴァップの雰囲気にとてもよく合います。これらの甘いお菓子は、冬の厳しさから解放された喜びや、新しい季節への期待感を表現しているかのようです。

子どもたちとフィンランドのヴァップについて考えるヒント

フィンランドのヴァップの食文化は、子どもたちに世界の祝祭と食のつながりを伝える良い機会となります。

まとめ

フィンランドのヴァップは、長い冬を乗り越え、春の訪れを心から喜ぶ人々の気持ちが詰まったお祭りです。このお祭りに欠かせないシマやフリッテリといった特別な食べ物や飲み物は、単なる食事ではなく、季節の移り変わりへの感謝や、未来への希望を象徴しています。食文化を通して、世界には多様な形で季節を祝い、人々のつながりを深める習慣があることを知ることは、異文化への理解を深める第一歩となるでしょう。