ガーナの飢餓を追い払う祭り ホモウォ なぜケンキーを食べるの?
ホモウォ祭りとは?
アフリカ西部のガーナ共和国には、多様な民族が暮らしており、それぞれ独自の文化や伝統的なお祭りを持っています。首都アクラを中心とした沿岸部に住むガー(Ga)という人々にとって、一年で最も大切なお祭りの一つが「ホモウォ祭り」です。
ホモウォ祭りは、主に8月から9月にかけて行われます。その名前「ホモウォ(Homowo)」は、ガー語で「飢餓を追い払う」という意味を持っています。このお祭りは、かつてガーの人々が深刻な飢餓を経験した歴史的な出来事に由来しており、その苦難を乗り越え、再び食べ物に恵まれたことへの感謝と、未来の豊作を祈るために行われます。
祭りの中心にある特別な食べ物「ケンキー」
ホモウォ祭りの期間中、ガーの人々の食卓に欠かせない特別な料理があります。それが「ケンキー(Kenkey)」と呼ばれる、トウモロコシの粉を発酵させて作る伝統的な食べ物です。ケンキーは、ホモウォ祭りだけでなく、ガーナ全土で日常的に食べられていますが、このお祭りの時期には特別な意味を持ちます。
ケンキーは、トウモロコシの粉に水を加えて生地を作り、これを数日間かけて発酵させます。発酵させることで、ケンキー独特の少し酸味のある風味が生まれます。発酵させた生地をバナナの葉やトウモロコシの皮で包み、じっくりと蒸して作られます。蒸し上がったケンキーは、そのまま食べたり、魚やオコウ(Okro)というオクラを使ったソースと一緒に食べたりします。
なぜホモウォ祭りでケンキーを食べるのか?
ホモウォ祭りが「飢餓を追い払う」祭りであることと、ケンキーを食べる習慣には深いつながりがあります。
- トウモロコシの重要性: 飢餓を経験した時代、トウモロコシは人々を支えた貴重な主食でした。ケンキーは、そのトウモロコシを加工したものであり、苦難を乗り越えられたことへの感謝の象徴として食べられます。
- 発酵という知恵: ケンキーは発酵させて作られます。これは、食料を長持ちさせるための先祖の知恵です。発酵によって保存性が高まることで、飢餓の時代においても食料を確保する助けとなりました。また、発酵による酸味には空腹感を紛らわせる効果があると信じられていたという説もあります。
- 分かち合い: ホモウォ祭りの期間中、ガーの人々は親戚や友人とケンキーを分かち合って食べます。これは、過去の苦難を皆で乗り越え、現在も共に生きていること、そして未来も支え合っていくという共同体の絆を確認する大切な行為です。祭りの名前の通り、食を分かち合うことで「飢餓」を追い払い、皆で豊かさを共有するという願いが込められています。
子どもたちに伝えるヒント
ホモウォ祭りやケンキーの話は、子どもたちに世界の食文化や歴史を伝える良い機会となります。
- トウモロコシってどんなもの?: 世界には、日本の焼きトウモロコシやコーンスープだけでなく、ポップコーンやコーンフレーク、トルティーヤ(メキシコ)など、様々なトウモロコシを使った料理があることを紹介しましょう。ガーナのケンキーも、その一つです。
- 発酵食品の不思議: ヨーグルト、味噌、パン、納豆など、身近な発酵食品を例に挙げて、「腐らせるのではなく、良い菌の力で食べ物を美味しくしたり、体に良くしたり、長持ちさせたりする昔の人の知恵なんだよ」と伝えてみましょう。ケンキーも、この「発酵」という不思議な力で作られています。
- お祭りの願い: ホモウォ祭りが「飢餓を追い払う」という願いから生まれたお祭りであることを伝えます。「世界には、昔食べるものがなくて大変な思いをした人たちがいたこと」「だからこそ、今食べ物があることに感謝するお祭りがあること」などを話し合ってみるのも良いでしょう。
- 一緒に作ってみよう?: ケンキーを作るのは少し難しいかもしれませんが、トウモロコシ粉(または米粉など)を使った簡単な蒸しパン風のお菓子を一緒に作ってみることで、食文化への興味を深めることができます。バナナの葉の代わりにアルミホイルなどで包んで蒸してみるのも、雰囲気を味わうヒントになるかもしれません。
食文化から学ぶ異文化理解
ガーナのホモウォ祭りにおけるケンキーは、単なる食べ物ではなく、ガーの人々が経験した歴史、困難を乗り越えるための知恵、そして共同体の絆や未来への願いが詰まった象徴です。食を通して、ガーナの人々が何を大切にしているのか、どのような歴史をたどってきたのかを感じ取ることができます。
このお祭りのように、世界の様々な場所で、特定の食べ物が祝日や伝統行事と深く結びついています。それぞれの食べ物に込められた意味を知ることは、その国や地域の人々の文化、歴史、価値観を理解するための素晴らしい入り口となるのです。