イタリアの春の祝祭 イースター なぜ卵とハトの形のお菓子を食べるの?
イタリアのイースターに欠かせない食のシンボル
世界には様々な祝日があり、その多くは特別な食文化と結びついています。今回は、春の訪れを喜び、キリスト教の重要な行事でもあるイタリアの「イースター(復活祭)」に注目します。イタリアのイースターは、家族が集まり、ごちそうを楽しむ大切な日です。特に、この時期に欠かせないのが「卵」と、ハトの形をしたお菓子「コロンバ・ディ・パスクア」です。これらには、一体どのような意味が込められているのでしょうか。
イースターとは?
イースター(復活祭)は、十字架にかけられて亡くなったイエス・キリストが復活したことを記念するキリスト教のお祭りです。日付は毎年変わり、「春分の日の後の最初の満月の次の日曜日」と定められています。多くの場合、3月下旬から4月にかけて祝われます。イタリアでは、カトリック教会が大きな役割を果たしており、イースターはクリスマスと同様に重要な祝日とされています。
復活のシンボル「卵」
イースターの食卓で最も特徴的なものの一つが「卵」です。なぜ卵がイースターと深く結びついているのでしょうか。卵は、固い殻の中に新しい命を宿していることから、「生命の誕生」や「復活」のシンボルとされてきました。冬を越えて新しい命が芽吹く春の訪れとも重なり、イースターにぴったりなシンボルとなったのです。
イタリアでは、イースターの前に断食を行う期間(レント)があり、かつては卵を食べることも控えられていました。断食期間中に溜まった卵を、イースターに一斉に食べる習慣が生まれ、それが祝祭の食文化として根付いたという背景もあります。
イースターの卵は、単に食べるだけでなく、色とりどりに飾り付けられたり、隠して探す「エッグハント」といった遊びに使われたりもします。最近では、中に小さなおもちゃが入ったチョコレートでできた卵(チョコレートエッグ)を贈り合うのも人気です。子どもたちは、このチョコレートエッグをもらうのを楽しみにしています。
平和と希望のシンボル「コロンバ・ディ・パスクア」
イースターのもう一つの代表的な食べ物が、「コロンバ・ディ・パスクア (Colomba di Pasqua)」という特別な焼き菓子です。「コロンバ」とはイタリア語で「ハト」を意味します。その名の通り、このお菓子はハトが羽を広げたような形をしています。
コロンバは、小麦粉、卵、バター、砂糖、酵母などを使い、じっくりと時間をかけて発酵させて作られます。生地にはオレンジピールなどが練り込まれ、表面にはアーモンドと砂糖の衣(グレーズ)がかけられ、パールシュガーやアーモンドが散らされています。ふっくらとしていて、パネトーネやパンドーロといったイタリアの他のクリスマスの伝統菓子と似た、風味豊かな味わいです。
ハトは、平和のシンボルとして世界中で知られています。また、キリスト教においては、聖霊のシンボルでもあります。イースターにハトの形のお菓子を食べることは、キリストの復活による平和と希望を願う意味が込められていると考えられています。このお菓子も、イースターの時期になるとパン屋さんやスーパーにたくさん並び、家族や友人への贈り物としても人気があります。
その他のイースター料理
イースターの昼食は、家族みんなで集まってごちそうを食べるのが伝統的です。断食期間が終わった喜びを分かち合うかのように、豊かな食卓が囲まれます。地域によって差はありますが、子羊肉のローストや、アーティチョークを使った料理などがよく食べられます。前菜からデザートまで、普段よりも豪華な食事が用意されます。
食文化を通してイースターを知るヒント
イタリアのイースターの食文化は、生命の誕生、復活、平和といった大切な願いが込められています。子どもたちにイースターを紹介する際には、次のような問いかけや活動が考えられます。
- 「どうして卵がイースターのお祝いに使われるんだろう?」「卵から生まれるものって何かな?」
- 「ハトはどんな生き物かな?」「平和のシンボルって聞いたことあるかな?」
- 「もし、自分が新しい始まりのお祝いの食べ物を考えるなら、どんな食べ物がいいかな?」
- 実際に卵に色を塗って飾り付けをしてみる。
- もし可能であれば、市販のコロンバを用意して、ハトの形を観察したり、味わってみたりする。
- イースターにまつわる絵本や物語を読んでみる。
食文化を通して、遠い国の祝祭日に込められた人々の願いや、その背景にある文化、歴史、宗教について考えるきっかけを提供できます。イタリアのイースターの食卓から、春の喜びや生命の大切さ、平和への願いを感じ取ってみてはいかがでしょうか。