韓国のお月見 秋夕 なぜ色とりどりのソンピョンを食べるの?
韓国のお月見 秋夕(チュソク)とは
世界には、その土地ならではの収穫を祝い、家族が集まる大切な日があります。韓国では、旧暦の8月15日を中心とした数日間を「秋夕(チュソク)」と呼び、最も重要とされる祝日の一つとして盛大に祝います。秋夕は、日本のお盆やお月見に近い行事で、収穫を感謝し、祖先を敬うために家族や親戚が集まります。
この時期、韓国の人々は故郷へ帰省し、先祖のお墓参りをしたり、家族みんなで食卓を囲んだりします。特に秋夕の夜には、一年で最も明るく美しい満月を眺める習慣があります。
秋夕に欠かせない伝統的な食べ物 ソンピョン
秋夕の食卓には、新米や採れたての果物、様々なごちそうが並びますが、中でもこの時期に絶対に欠かせない伝統的な食べ物があります。それは「ソンピョン(송편)」と呼ばれる、一口サイズの美しい餅菓子です。
ソンピョンは、うるち米の粉をこねて生地を作り、中にゴマ、小豆、栗、ナツメなどの餡(あん)を詰めて作られます。特徴的なのはその形と色です。一般的なソンピョンは半月形をしており、ヨモギやカボチャ、クチナシなどの天然の色素を使って、緑色、黄色、ピンク色など、色とりどりに彩られます。そして、蒸すときには下に松の葉を敷くことから、「松の葉餅」という意味でソンピョンという名前がついたと言われています。松の葉の爽やかな香りが餅に移り、独特の風味を生み出します。
なぜ秋夕にソンピョンを食べるのか
ソンピョンが秋夕に食べられるようになったのは、新米の収穫を祝い、その年の恵みに感謝するという秋夕本来の目的と深く結びついています。新しく収穫された米を使ってソンピョンを作り、祖先にお供えしたり、家族で分け合ったりすることで、豊作への感謝と喜びを分かち合ったのです。
また、ソンピョンの半月形には特別な意味が込められていると言われています。満月はいつか欠けていくものですが、半月はこれから満月へと満ちていく形です。このことから、半月形のソンピョンには「これから満ちていくように、希望に満ちた未来や発展」への願いが込められているという説があります。未完成の半月がやがて満月になるように、人々はソンピョンに家族の健康や幸せ、願い事などを託したのです。
さらに、家族や親戚が集まって、みんなで生地をこね、餡を詰め、ソンピョンを作るという共同作業も、秋夕の大切な文化です。一緒に作業することで、家族の絆を深める時間となります。「きれいにソンピョンを作れる人は、将来良い相手と出会える」というような面白い言い伝えもあり、子どもたちも張り切って作る姿が見られます。
食文化から異文化を学ぶヒント
ソンピョンを通して、韓国の秋夕という祝日や、そこに込められた人々の願い、家族のつながりについて学ぶことができます。
- 形に意味があること: ソンピョンの半月形に願いを込めるように、世界には食べ物の形や色に特別な意味を持たせる文化があることを考えてみるのはどうでしょうか。
- 一緒に作る楽しさ: ソンピョンを家族みんなで作るように、日本の行事でもお団子を丸めたり、巻き寿司を作ったりと、一緒に食べ物を作る楽しさについて話してみることもできます。
- 感謝の気持ち: 収穫した新米でソンピョンを作るように、食べ物や自然の恵みへの感謝の気持ちを話し合うきっかけにもなります。
韓国の秋夕に食べられる色とりどりのソンピョンは、見た目の美しさだけでなく、収穫への感謝や家族の絆、そして未来への希望が詰まった、心温まる食文化なのです。