スペインの三賢者の日 なぜロスコン・デ・レジェスを食べるの?
スペインのお正月を彩る祝日
スペインでは、1月6日は「ディア・デ・レジェス(Día de Reyes)」と呼ばれる大切な祝日です。これは「三賢者の日」や「公現祭」とも呼ばれ、キリストが誕生した際に東方から三人の賢者が贈り物を持って訪れた出来事を記念する日とされています。多くのスペインの子どもたちにとって、この日は1年で最も待ち望む日の一つです。なぜなら、クリスマスではなく、この三賢者の日にプレゼントが届くと考えられているからです。
そして、このディア・デ・レジェスのお祝いに欠かせないのが、特別な伝統菓子「ロスコン・デ・レジェス(Roscón de Reyes)」です。
幸運を運ぶリング状のお菓子、ロスコン・デ・レジェス
ロスコン・デ・レジェスは、その名の通り「王様たちのリング」という意味を持つ、丸い形をしたパンのようなお菓子です。甘くふんわりとした生地に、ドライフルーツやオレンジの皮の砂糖漬けが彩り豊かに飾られ、王冠に見立てられています。中には生クリームなどが挟まれているものもあります。
ディア・デ・レジェスの日には、家族や親戚が集まり、このロスコン・デ・レジェスを切り分けてみんなで食べます。しかし、このお菓子には普通のお菓子にはない、ある秘密が隠されています。
ロスコン・デ・レジェスに隠されたサプライズ
ロスコン・デ・レジェスの中には、二つのものが隠されているのが伝統的なスタイルです。一つは小さな人形(フィグラ)、もう一つはソラマメ(ハーバ)です。
お菓子を切り分けて各自の分を取る時、誰のピースに人形やソラマメが入っているかは分かりません。食べ進めていくうちに、思いがけないサプライズが待っています。
- 人形が当たった人: 人形が当たった人は「王様」または「女王様」とされ、その日の主役となります。用意された紙の王冠をかぶり、みんなから祝福されます。幸運が訪れると言われています。
- ソラマメが当たった人: ソラマメが当たった人は、少し残念な役割が待っています。伝統的には、翌年のロスコン・デ・レジェスを自分が買う(支払う)という習わしがあります。これは罰ゲームのようなものですが、ユーモアを交えて楽しまれます。
このサプライズは、家族の集まりに賑わいと笑いをもたらし、ディア・デ・レジェスのお祝いをより楽しいものにしています。
なぜこの形?なぜ中に隠す? ロスコンの背景にある意味
ロスコン・デ・レジェスの丸い形は、いくつか説がありますが、王冠や、終わりがない永遠を象徴していると言われています。上に飾られたドライフルーツは、三賢者がキリストに捧げた宝石を表しているとも伝えられています。
中に人形やソラマメを隠す風習には、より深い意味があります。
- 人形: 人形は、キリストの誕生や、それを探し当てた三賢者を表していると言われます。困難を経て宝(キリスト)を見つけ出す旅になぞらえている、という見方もあります。人形を見つけることは、幸運や喜びを見つけ出すことにつながります。
- ソラマメ: ソラマメは、古代から様々な文化で特別な意味を持つ豆です。貧しさや謙遜を象徴することもあります。また、一番最初に芽を出す豆として、豊穣や生命力を表すという説もあります。ロスコンの中のソラマメには、「一番価値が低いもの」という意味合いを持たせ、人形という「幸運」との対比を強調しているという解釈があります。ソラマメが当たった人が次のロスコンを買うというのも、古代ローマの祭りのくじ引きに由来するなど、様々な説があります。
ロスコン・デ・レジェスをみんなで切り分け、中に何が入っているかドキドキしながら食べる時間は、三賢者が星を頼りに旅をした物語や、贈り物を見つける喜びを、食を通して追体験しているかのようです。
子どもたちに伝えるためのヒント
ディア・デ・レジェスとロスコン・デ・レジェスの物語は、子どもたちにも興味を持ってもらえるエピソードがたくさんあります。
- 物語で紹介: 三賢者の旅の絵本を読み聞かせたり、三賢者が贈り物(黄金、乳香、没薬)を持ってきたお話をしたりすることから始めることができます。なぜ三賢者の日にプレゼントが届くのか、クリスマスとの違いなど、国による文化の違いを紹介する良い機会になります。
- 「隠されたもの」体験: ロスコン・デ・レジェスそのものを家庭で作るのは少し大変かもしれませんが、市販のリング状のパンやケーキを使い、上にドライフルーツなどを飾って、小さなおもちゃやプラスチック製の豆などを中に隠して切り分ける、といった簡単な形で体験してみるのも楽しいでしょう。「中に何が入っているかな?」とクイズ形式にしたり、「当たった人はどんな気持ち?」と問いかけたりすることで、子どもたちの興味を引き出すことができます。
- 質問を投げかける: 「もしみんながロスコン・デ・レジェスで王様になったら、どんな王様になりたいかな?」「ソラマメが当たっちゃったら、どんな顔をするかな?」といった問いかけは、異文化の風習を通して、子どもたちが自分ならどう感じるか、どう行動するかを考えるきっかけになります。
食を通して、スペインのディア・デ・レジェスという祝日や、贈り物、幸運、そして皆で分かち合うことの大切さを学ぶことができるでしょう。