食文化で知る世界の祝日

セント・パトリック・デー なぜアイルランドでは緑色のものを食べるの?

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セント・パトリック・デーは、アイルランドの守護聖人である聖パトリックを記念する祝日です。毎年3月17日に祝われ、アイルランド国内はもちろんのこと、アイルランド系移民が多いアメリカ合衆国やカナダなど、世界各地で盛大にお祝いされます。この日は、アイルランドの文化や遺産を称える日として知られ、特に「緑色」がシンボルカラーとして街中に溢れます。

セント・パトリック・デーはなぜ「緑」なの?

セント・パトリック・デーが緑一色に染まるのには、いくつかの理由があります。最もよく知られているのは、アイルランドの国花であるクローバーの一種「シャムロック」に由来するという説です。聖パトリックは、三位一体(神、子、聖霊)を人々に説く際に、3枚の葉を持つシャムロックを使ったと伝えられています。このシャムロックがアイルランドの象徴となり、やがて幸運や春の訪れ、そしてアイルランドそのものを表す色として緑が定着しました。

また、アイルランドの美しい自然、特に緑豊かな丘陵地帯「エメラルドの島」と呼ばれる風景も、緑が重要な色となった理由の一つです。春のこの時期、草木が芽吹き始めることとも重なり、緑は生命力や再生のシンボルとも考えられています。

祝日を彩る緑色の食文化

セント・パトリック・デーには、このシンボルカラーである「緑」をテーマにした様々な食べ物や飲み物が登場します。緑色のビール、緑色のパンやケーキ、緑色のアイシングを使ったクッキーなど、工夫を凝らした緑色の料理やお菓子が食卓に並びます。家庭で簡単にできるものとしては、緑色の食用色素を使ったパンケーキやマッシュポテト、ほうれん草やブロッコリーを使った料理なども人気です。

この日に緑色のものを身につけたり食べたりすることは、「ラッキー(幸運)」をもたらすと信じられています。子どもたちにとっては、この日だけは普段とは違う特別な緑色の食べ物を楽しめる、楽しいイベントとなっています。

伝統的なセント・パトリック・デーの食事:コンビーフとキャベツ

緑色の食べ物だけでなく、セント・パトリック・デーの伝統的な食事として代表的なのが「コンビーフとキャベツ」です。コンビーフは、牛肉を塩漬けにしてから茹でたもので、これにキャベツやジャガイモ、ニンジンなどの野菜を加えて煮込みます。

もともと、アイルランドでは牛肉は高価だったため、伝統的に豚肉(特にベーコン)をキャベツと煮込んだ料理が一般的でした。しかし、アイルランド系移民がアメリカに渡った際、安価で手に入りやすかった牛肉を使い、コンビーフが生まれました。コンビーフの塩味がキャベツの甘みを引き立てるこの料理は、故郷アイルランドを離れた人々が故郷を偲び、集まって祝う中で定着していった食文化と言えます。

単に緑色のものを食べるだけでなく、コンビーフとキャベツのような伝統料理には、移民の歴史やその土地での生活の知恵、そして故郷への思いが詰まっているのです。

子どもたちとセント・パトリック・デーの食文化を楽しむヒント

セント・パトリック・デーの食文化は、子どもたちにとって異文化に触れる良い機会です。

食文化を通して異文化への理解を深める

セント・パトリック・デーの緑色の食べ物やコンビーフとキャベツの料理は、単なる色や味だけでなく、アイルランドの歴史、信仰、そして人々の生活や移動の物語が詰まっています。その国や地域の祝日に食べられる特別な料理には、必ず理由や背景があります。なぜその食べ物を食べるのか、どのような願いや意味が込められているのかを知ることで、その文化への理解を深めることができます。

子どもたちに世界の祝日を紹介する際には、「なぜこれを食べるのかな?」「この食べ物にはどんな秘密があるんだろう?」といった問いかけを通じて、食文化を異文化理解の入り口として活用してみてはいかがでしょうか。