食文化で知る世界の祝日

トルコの断食明け大祭 ラマザン・バイラム なぜ甘いお菓子をたくさん食べるの?

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食文化を通して世界の祝日を知るシリーズ。今回は、トルコをはじめとするイスラム圏で見られる、甘いお祭りに焦点を当てます。イスラム教徒にとって大切なラマダン(断食月)が明けると訪れる「ラマザン・バイラム」です。トルコではこのお祭りを「シェケル・バイラム」、つまり「砂糖の祭り」とも呼びます。なぜ断食明けに、これほどまでに甘いお菓子が重要なのでしょうか。

ラマザン・バイラムとは

ラマザン・バイラムは、イスラム暦の9月であるラマダン(断食月)の終了を祝う大切な祝祭日です。断食は、イスラム教徒が日の出から日没まで飲食を断ち、内省や慈善を行う期間です。ラマダンが明けると、喜びとともにラマザン・バイラムが始まり、通常は3日間続きます。

この期間、人々は新しい服を着て、家族や親戚、友人などを訪問し合います。特に、年下の者が年長者の手にキスをして敬意を表す習慣が見られます。そして、どの家庭でも欠かせないのが、甘いお菓子のおもてなしです。

「砂糖の祭り」を彩る甘い食文化

ラマザン・バイラムが「砂糖の祭り」と呼ばれるのは、この時期に家々で大量の甘いお菓子が用意され、振る舞われることに由来します。訪問者は家に着くとまず、コーヒーや紅茶とともに様々なお菓子を勧められます。子供たちが訪問すると、お菓子だけでなく、お小遣い(バイラムリック)が渡されることもあります。

この時期に特に人気のあるお菓子には、以下のようなものがあります。

これらのお菓子は、家庭で作られることもありますが、専門店で大量に購入して準備することも一般的です。家々には様々なお菓子が美しく盛り付けられ、訪れる人々を歓迎します。

甘いお菓子に込められた意味と背景

では、なぜラマザン・バイラムでは甘いお菓子がこれほどまでに重要なのでしょうか。そこにはいくつかの意味合いが込められています。

まず、断食の終了と喜び、そして神への感謝です。1ヶ月間の厳しい断食を無事終えられたことへの安堵と喜びを分かち合うために、美味しいものを食べるのは自然なことです。特に甘いものは、疲れを癒やし、エネルギーを補給するのに適していると考えられています。

次に、分かち合いと 공동体(共同体)の絆です。ラマザン・バイラムは、家族や親戚、近所の人々との関係を深める良い機会です。家を開放してお菓子を振る舞うことは、歓迎と親愛の情を示す行為です。皆で同じ甘いものを食べることで、一体感が生まれます。子供たちにお菓子やお小遣いをあげることは、次世代への喜びの継承でもあります。

「シェケル・バイラム(砂糖の祭り)」という別名自体が、この祝祭の甘く楽しい雰囲気をよく表しています。歴史的には、オスマン帝国時代からこの時期に甘いものを贈り合う習慣があったとも言われています。甘さは幸福や繁栄を象徴し、新しい始まりを甘く迎えたいという願いも込められているのかもしれません。

食文化から広がる異文化理解へのヒント

ラマザン・バイラムの甘い食文化を知ることは、トルコやイスラム圏の人々の価値観や文化に触れる素晴らしい機会となります。

食卓に並ぶ甘いお菓子一つ一つに、断食を終えた喜び、人々との絆、そして未来への希望が込められているラマザン・バイラム。この甘い体験を通じて、世界の多様な文化や人々の暮らしに思いを馳せることができます。