アメリカの感謝祭 なぜ七面鳥を食べるの?
感謝祭とは
アメリカ合衆国では、毎年11月の第4木曜日に「感謝祭(Thanksgiving Day)」という祝日があります。これは、家族や大切な人たちが集まり、収穫の恵みや日々の生活に対する感謝の気持ちを分かち合う大切な日です。学校や会社は休みになり、多くの人が遠く離れた家族のもとへ帰省します。感謝祭の翌日はブラックフライデーとして知られ、年末商戦の始まりでもあります。
感謝祭に欠かせない「七面鳥」
感謝祭の食卓に最も欠かせないものといえば、大きな七面鳥の丸焼きです。家族が集まる食卓の中心には、こんがりと焼かれた七面鳥が置かれ、皆で切り分けて食べます。七面鳥の他にも、クランベリーソース、マッシュポテト、グレイビーソース、グリーンビーンズ、スイートポテトなどが付け合わせとして並びます。デザートには、パンプキンパイやりんごのパイが定番です。
なぜ感謝祭に七面鳥を食べるのか
感謝祭の起源は、17世紀初頭にヨーロッパから北米大陸に移住したピルグリム・ファーザーズに遡ります。彼らは新しい土地での厳しい冬を乗り越えるため、先住民であるワンパノアグ族から農業や狩猟、漁の方法を教わりました。そして、翌年の秋に初めて迎えた豊かな収穫を祝って、ワンパノアグ族を招いて共に宴を開きました。これが最初の感謝祭と言われています。
この最初の宴でどのような食事が振る舞われたのか、詳しい記録は残っていませんが、当時の日記などから、鹿肉、魚、とうもろこしなどの農産物、そして野生の七面鳥などが食べられたと考えられています。
七面鳥が感謝祭の象徴的な食べ物となった背景には、いくつかの理由があります。まず、当時の北米には野生の七面鳥が多く生息しており、比較的手に入れやすい食料でした。また、一羽で大人数に十分な量があるため、家族や共同体で集まって食べる宴に適していました。さらに、他の家畜(牛や豚など)は、ミルクや卵、労働力としても貴重だったため、特別な時に食肉として利用されるのは七面鳥の方が多かったとも言われています。
時を経て、感謝祭は国民的な祝日となり、家庭で七面鳥を焼いて祝う習慣が広く定着しました。今日では、収穫の恵みと、新しい土地で生きる知恵を与えてくれた先住民への感謝、そして家族や友人との絆を確かめ合う日として受け継がれています。
食文化にまつわるエピソードや豆知識
- 最初の感謝祭の料理: 最初期の感謝祭では、現代のようにオーブンで丸焼きにするのではなく、七面鳥は煮込み料理にされることが多かったようです。
- スタッフィング: 七面鳥のお腹に詰める「スタッフィング(Stuffing)」や「ドレッシング(Dressing)」も感謝祭の定番です。パンやセロリ、玉ねぎ、ハーブなどを混ぜたものを詰めて七面鳥と一緒に焼いたり、別に焼いたりします。それぞれの家庭に伝わる秘伝のレシピがあることも多いです。
- 大統領による七面鳥の恩赦: 感謝祭の時期になると、アメリカ大統領が感謝祭用の七面鳥に恩赦を与え、食肉処理場行きを免れるというユニークな儀式が行われます。これは比較的近代になって始まった慣習ですが、感謝祭のユーモラスな一面として知られています。
家庭で体験できるヒント
感謝祭の食文化を体験することは、異文化理解を深める良い機会となります。
- 簡単な感謝祭風デザート: パンプキンパイは難しそうでも、市販のビスケットやクラッカーを砕いて土台にし、カボチャのペースト(市販のものや、蒸して潰したものに砂糖やスパイスを加える)と生クリームを混ぜたものを乗せるだけで、感謝祭風のデザートが作れます。シナモンやナツメグなどのスパイスを使うと、より本格的な風味になります。
- 感謝の気持ちを伝える: 感謝祭の「感謝する」という目的に焦点を当てて、家族や友達に感謝していることを伝え合う時間を作るのも良いでしょう。「ありがとう」の気持ちをカードに書いたり、言葉で伝えたりするだけでも、感謝祭の精神に触れることができます。
- 関連する物語や絵本: 感謝祭の起源や、ピルグリムと先住民の交流について描かれた子ども向けの絵本や物語を読むこともおすすめです。食文化だけでなく、歴史や文化背景への関心を深めるきっかけになります。
食文化から異文化理解へ
感謝祭の七面鳥や豊かな食卓は、単なる料理ではなく、苦難を乗り越えた人々の感謝の気持ちや、異なる文化を持つ人々が助け合った歴史を今に伝えるものです。食を通して、人々の暮らしや考え方、大切にしていることを知ることは、世界の様々な文化を理解するための第一歩となります。感謝祭の食卓に並ぶ一品一品に込められた意味を知ることで、異文化への理解を深めることができるでしょう。